おはなし隊日記

「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」は、2台のキャラバンカーで各都道府県を
巡回しています。
桃色の1号車、緑色の2号車に乗車し、全国を訪問した隊長たちの日記を
ご紹介します。

2025.04.20滋賀県 公益財団法人 江北図書館

隊長 : 鈴木 崇之

日本最古クラスの私立図書館「江北図書館」で、キャッフィーとおはなし隊が初コラボ!

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日本最古クラスの私立図書館「江北図書館」で、キャッフィーとおはなし隊が初コラボ!

今年で26年目を迎えた「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」は現在、滋賀県と埼玉県を訪問中(2025年4月中旬から5月下旬まで)。今回は4月20日、21日に訪問した、とても珍しい二つの訪問先について、特別に2回に分けてレポートします。
さて、何が「珍しい」のか? これまで2万4000ヵ所近い場所を訪問してきた「おはなし隊」にとっても、とても貴重な体験ができました。

●今年で設立119年、日本最古クラスの「私立」図書館
まず4月20日の日曜日に「おはなし隊」が向かったのは、公益財団法人 江北(こほく)図書館。滋賀県内では現存する最古の図書館であるのはもちろん、日本全国で見ても、自治体が運営にタッチしない「私立」の図書館としては、最古クラスです。
実はこの江北図書館と、おはなし隊を運営している講談社はご縁があります。というのも、講談社の初代社長・野間清治の遺志により設立された「野間文化財団」主催の「野間出版文化賞特別賞」(令和4年度)に選ばれたのが、この江北図書館なのです。

同館の久保寺容子館長は言います。
「野間出版文化賞特別賞をいただいたことが契機となって、多くの方にこの図書館の存在を知っていただくことができました。私立なので金銭的にも苦しいなか運営しているのですが、老朽化した施設を少しでも新しくするためにクラウドファンディングでご寄付を募ったところ、賞の受賞と合わせて毎日新聞がクラファンのことも取り上げていただき、全国から多くのご寄付をいただくことができました」

●図書館の貸出冊数で全国1位の座を東京と争う「本好き県」
おはなし隊が訪問した当日は、その記事を書いた毎日新聞論説委員の小倉孝保さんも駆け付けてくれていました。小倉さんは滋賀県出身で、ちょうどご自分の本(『35年目のラブレター』講談社刊)関連の講演などもあって、地元に帰省されていたそうです。
「こういう私立の図書館が存続していることも貴重だし、そこで『おはなし隊』のような子どもの読み聞かせをするイベントが開催されるというのは、試みとしてもとても興味深い。実は、滋賀県は図書館の貸出冊数で長年、全国1位の座を東京都と争うほど、図書館好きな県民性なんです」(小倉さん)

●県の公式キャラクター「キャッフィー」が登場!
そんな「本好き」「図書館好き」県の子どもたちは、江北図書館にやってきた「おはなし隊」キャラバンカーに興味津々です。でもその前に……今回の滋賀訪問では滋賀県庁の皆さんにも告知などで大きなご協力をいただいたのですが、県庁の皆さんが会が始まる前にスペシャルゲストを呼んでくれていたのです。 読み聞かせを担当する佐々木貴美子隊長の呼びかけで登場したのは、滋賀県の公式イメージキャラクター「キャッフィー」! 集まった子どもたちとキャッフィーで、しばしの撮影タイムの始まりです。

前書きが長くなりましたが、いよいよおはなし会の始まりです。日曜日ということもあって、親子で参加してくださった方が大半でしたが、キャラバンカーに積載されている約550冊の絵本のなかから気になる本を手に取っては、江北図書館の駐車場に敷いたブルーシートのうえで、思い思いの格好で本を読んでいます。約30分の自由閲覧タイムの後は、いよいよ館内に移動しての読み聞かせの始まりです。
館内には郷土資料や昔の童話など、貴重な資料が一杯。読み聞かせ会場となる2階に上がる階段がギシギシと軋むところが歴史を感じさせます。

●「なまず」が主人公の感動的な物語
佐々木隊長が最初に選んだ絵本は『ぶくぶく ざばあ』(作:新井洋行、絵:田中六大、講談社)。水面に浮かぶ白い泡。「水の中には何がいるかなぁ?」と佐々木隊長が問いかけると、あちらこちらから子どもたちの声が上がります。その反応を待ってから、本を縦に開くと飛び出してきたのは大きな錦鯉です。さて、次は何が飛び出すか?

次に佐々木隊長が手にしたのは『なまずにいさん』(作:穂高順也、絵:西野沙織、講談社)。先ほど遊びに来てくれたキャッフィーに因んで、なまずが主人公の絵本です。ひとりぼっちで暮らしていたなまずのところに、姿形そっくりの弟や妹が現れます。ところが日が経つにつれて、弟や妹の姿はなまずとは似ても似つかぬものに。そして、別れが訪れるのですが……。感動的な物語のつづきは、ぜひ実際の絵本を読んで確認してくださいね。

●みんなでトム・ブラウンになりきって「ダメー!」
その後に読んだ『くだもの ぱくっ』(作:彦坂有紀、もりといずみ、講談社)では、子どもたちも一緒に大きな口を開けて食べる真似をしてくれました。メロンやマンゴーの高級くだものが出てきたら、佐々木隊長が「これは高価なくだものなので、大人の方も一緒にどうぞ。はい、みんなで『ぱくっ』。おいしかったですかー?」と話しかけます。元気な声で「おかわり!」と答えてくれる子どももいましたよ。

この日4冊目の絵本は大人気の『がったい!』(作:こにしけい、たなかけんた、絵:萬田翠、出演:トム・ブラウン、講談社)。お笑いコンビのトム・ブラウンが主人公のこの絵本。彼らの決めゼリフ「ダメ~!」をみんなで絶叫して、大変な盛り上がりです。大人も子どもも大笑い必至の、「おはなし隊」お勧めの新定番です。

●子どもたちが大人になって、再び江北図書館を訪問するまで
最後はいろんな種類のパンが登場する『いっきんず』の紙芝居。紙芝居を初めて目にするお子さんもいるようで、拍子木を打ちならす甲高い音に合わせて手拍子してくれました。ここでも大きな口を開けて、いろんなパンをもぐもぐもぐ。

キャラバンカー内の本の自由閲覧と読み聞かせで、約1時間余りの「おはなし会」は終了です。おみやげに「もったいないばあさん」のシールをもらった子どもたちからは、「ありがとうございました」という元気なお礼の言葉をいただきました。

江北図書館理事長の岩根卓弘さんが、「おはなし会」を見届けて、こう語ってくれました。
「江北図書館におはなし隊が来てくれて、本当によかったです。今日来てくれた子どもたちが大きくなって、今度は自分の子どもたちを連れてこられるようになるまで、この図書館を守っていきたいですね」

ちなみに江北図書館の脇には、地元のパン屋さん「つるやパン」が営む「つるやカフェ」が昨年オープンしたばかり。名物はたくあんとマヨネーズを和えたものをコッペパンにたっぷり挟んだ「サラダパン」。さっぱりして美味しかったですよ。
日本最古クラスの私立図書館「江北図書館」を訪問した翌日は、日本でもここだけという珍しい小学校へ向かいましょう。

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