世界遺産の村に響く、本と子どもたちの「結」の物語
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●春の息吹に包まれた訪問の幕開け
世界遺産の合掌造り集落が静かに息づく岐阜県白川村。四方を険しい山々に囲まれたこの地に、桃色のキャラバンカーがやってきました。
例年、白川村の桜は4月下旬に開花し、ゴールデンウィークの観光客を楽しませてくれますが、今年の春は少し足早だったようです。午前中に訪れた白川保育園の園庭では、すでに桜が満開を迎えていました。
見上げれば吸い込まれるような快晴の青空、視線の先には真っ白な雪を頂く雄大な山々。雪山の「白」、空の「青」、桜の「ピンク」、そしてキャラバンカーの鮮やかな「桃色」が見事に溶け合い、まるで一幅の絵画のように息を呑むほど美しい訪問のスタートとなりました。
●白川保育園での心温まるひととき
可愛らしい動物たちのイラストが描かれた門をくぐると、驚くほど人懐っこい子どもたちがキャラバンカーに次々と話しかけてくれました。
いざおはなし会が始まると、その集中力とお行儀の良さに驚かされます。問いかけには元気よく答えながらも、決して前へ身を乗り出したり騒いだりすることなく、物語の世界を全身で楽しんでくれました。村の豊かな教育の土壌が、こうした姿勢を育んでいるのだと感じます。
『トイ トイ トイレットペーパー』
みんなで一緒に、積極的に「トイトイトイ!」と元気な声を響かせてくれました。
『りんごが コロコロコロリンコ』
最後のページで「わたし」のところにリンゴが転がってきて、「つかまえた、パク!」と食べると、「(もともとは)ぞうさんのリンゴなのに!」としっかり物語を覚えてくれており、ぞうさんを思いやる優しい心に感激しました。
●白川郷学園で広がる笑顔と学び
午後は、開校10年目を迎えた「白川郷学園」を訪問しました。
こちらは岐阜県初の「義務教育学校」として、村の小学校と中学校が統合し誕生した9年制の小中一貫教育校です。1年生から9年生が同じ学舎で学び、日常的に学年を超えた交流が行われています。
先生のお話によると、小中一貫校となったことで教育委員会の連携もスムーズになり、より自由度の高い教育活動が可能になったとのこと。小中双方の教員免許を持つ専門性の高い先生方が学年を兼務し、村の宝である子どもたちを強力にサポートしています。
木の温もりにあふれる美しい校舎で行われたおはなし会では、学年ごとに多様な反応を見せてくれました。
1・2年生
『アントンせんせい おでかけです』では、絵の中に隠れた動物を子どもたちが即座に発見! なかなか気づかない先生の様子を見て、みんなで大笑いする微笑ましい一幕がありました。
3・4年生
『うどん対ラーメン』のユーモアあふれる結末に大爆笑。一方、『ともだち』という絵本で主人公が「児童にとって最も身近な職業」に就くラストシーンでは、静かにその内容を受け止め、じっくりと味わっている様子でした。
おはなし会の終了後には、代表の児童が恥ずかしそうにしながらも、一生懸命自分の言葉でお礼を伝えてくれました。紙芝居『もったいないばあさん まほうの くにへ』を読んだ影響か、エコやリサイクルへの関心が高まったという感想も聞かせてくれ、本が届けるメッセージの力強さを実感しました。
● 受け継がれる「結(ゆい)」の精神
白川村には、古くから合掌造りの屋根を葺き替える際などに助け合う「結(ゆい)」という伝統があります。先生は、「昔は労働の助け合いでしたが、今はそれが精神、気持ちの助け合いとして残っています」と教えてくださいました。
雪山に見守られた美しい学び舎で出会った、子どもたちの澄んだ瞳。この地で大切に育まれている「結」の精神が、本を通じて得た新しい感動と共に、これからも美しく継承されていくことを願ってやみません。

